女悪魔ルクレティア・バルツィーニ番外編 スケバン中学生



 (注:今回は番外編ということで、チェーザレが会社員だったり、ルクレティアがスケ番中学生だったりします。そういう点でいつもとは大分感じが違いますので、許容できない方はスルーして下さい)


 東京都心某所のマンションの一室。
そこで慌しい朝が繰り広げられようとしていた。
 「きゃあああ~~~。こんな時間~~~~!遅刻しちゃう~~~!」
ルクレティアは慌てふためいた声で叫ぶや、パンを口にくわえて飛び出そうとする。
「こらこら、ルクレティア、そんなに慌てたら怪我するよ。落ち着きなさい」
焦ってドアから飛び出そうとする妹に対し、チェーザレは背後からそう言い聞かせた。
「そんなこと言ったって~~!兄さんが起こしてくれないからじゃないの~~~!」
「こらこら。何を言ってるんだ。もう中学生なんだから一人で起きられるだろう?」
「それはそれ!これはこれよ!朝は兄さんに起こしてもらいたいの!」
「全く・・お前は甘えん坊なんだからな・・・」
妹の言葉に思わずチェーザレは苦笑する。
「いいじゃない~。それより兄さん、行ってらっしゃいの『ハグ』とキスしてぇ~~」
制服姿のルクレティアはスーツ姿の兄の腕に抱きつくと甘えた声でねだる。
ちなみに、ルクレティアは都内の私立中学校に通う中学生で、チェーザレは外資系企業に勤めるイタリア系サラリーマンだ。
「わかってるよ。いってらっしゃい」
チェーザレは妹を両手で抱きかかえるようにしてギュッと抱きしめると、ルクレティアの額と頬にキスしてやる。
「えへへ。兄さんだ~い好き~~」
ルクレティアは猫のように兄の腕に顔を擦りつけると心底嬉しそうな声を出す。
「こらこら、時間はいいのかい?」
「ってこんな時間~~~。行ってきます~~」
ルクレティアは慌てふためきながら、鞄をぶら下げて猛ダッシュでマンションの部屋を飛び出す。
「全く・・・もう少し落ち着いて行動できるようになってくれるといいんだけど・・」
チェーザレは妹の後姿を見ながら思わず苦笑いする。
「おっと。私もこうしちゃいられないな」
チェーザレは腕時計を見やると、自分も歩き出した。
 (兄さん・・もう行ったわよね?)
学校に行くと見せかけて兄の様子を物陰で伺っていたルクレティアは兄がいなくなったのを確かめると、学校とは全く違う方向へ行った。
ルクレティアがやって来たのは駅。
駅のコインロッカーへやって来るとルクレティアは鍵を取り出してロッカーの一つを開ける。
そして中から紙袋や布で包んだ細長い包みを取り出した。
ロッカーの中身を取り出したかと思うと、今度は駅周辺の公衆トイレに駆け込む。
しばらくして出てきたルクレティアは、マンションを後にしたときとは全く異なった姿になっていた。
 ルクレティアは袖や裾を極限まで短くしたセーラー服を着ている。
腕は半袖よりも短いし、お腹はヘソだし状態、スカートもギリギリまで短くしており、パンツが見えかけている。
しかも履いているパンツは黒のレザー風のTバックパンツ。
大きく開いた胸元から見えているブラジャーもパンツ同様黒のレザー製だった。
そんなまるで大人を挑発するかのような色っぽい姿をしている一方で、右手に手にしている竹刀がギャップを招いていた。
 着替えを済ませたルクレティアが駅の構内にたむろしていると、ルクレティアより年下と思しき中学生が集まってきた。
いずれも髪を染めていたり、服を着崩していたりして、不良っぽい感じを漂わせている。
「おはよーッス!ルクレティアさん!」
「おはようじゃないわよ!約束の時間より遅れてるじゃない!」
「すんませ~ん!寝坊しちまって~!」
集まってきた中学生の一部がルクレティアにそう謝る。
「すんませんじゃないわよ!時間はちゃんと守れって言ってるでしょ!」
ルクレティアの剣幕に思わず男子生徒たちは身を縮込ませる。
ルクレティアは彼女の学校の不良たちのリーダー、いわゆるスケ番だ。
兄の目を盗んで、街で仲間と一緒に学校をサボって繁華街などで遊んでいた。
無論、兄にはばれないように色々と防御策をしっかりと張り巡らせているのだが。
「まあいいわ。行くわよ」
そういうやルクレティアは愛用の竹刀を担いだまま歩き出した。
「って待ってくださいよ~~!」
「愚図愚図しない!置いてくわよ!」
仲間たちが慌てふためいているのを尻目にルクレティアはドンドン繁華街を進んでいった。


 (はぁ・・・さすがにキツイな。一休みするか)
額から噴き出す汗をハンカチで拭きながらチェーザレはそう考えた。
今日は朝から外回りで既に数軒回っている。
忙しいのはいつものこととはいえ、ここのところはデスクワークが多かったせいか、体力を消耗してしまったらしい。
汗を拭きつつ通りを歩いていたチェーザレはふと喫茶店を見つける。
ちょうどいいと思ったチェーザレは迷わずその店に飛び込んだ。
 (はぁ・・・生き返る・・・)
淹れたてのエスプレッソコーヒーを飲みながら、チェーザレはホッと一息ついた。
ゆっくりとコーヒーをすすりながら、チェーザレは窓の外を見やる。
店が繁華街の中にあるせいか、行き交う人の姿も多かった。
中には中高生らしい若者たちの姿もある。
 ふと、チェーザレはコーヒーに視線を落とす。
(そういえば・・・またデートしたいって言ってたなぁ・・・)
チェーザレは妹がこの間またデートしたいと言っていたのを思い出した。
兄妹仲がよいせいか、二人は時々デートをするのが何よりも楽しみだった。
特に、ルクレティアは最近いいカフェを見つけたらしく、一緒に行きたいと最近チェーザレにおねだりしていたのである。
(でも・・まだ片付かないからなぁ・・・)
チェーザレは今自分が抱えている仕事のことを考え、思わずため息をつきそうになる。
妹のお願いを聞いてやりたいが、今はまだ無理そうだった。
(っていつまでもぼやいてるわけにもいかないな。仕事だ仕事!)
チェーザレは気持ちを切り替えるとコーヒーを飲み干した。
飲み終えるとチェーザレは伝票を掴んで立ち上がろうとする。
そのとき何気なく窓の外へ再び目を向けていたのだが、不意に凍りつきでもしたかのごとくチェーザレの動きが止まった。
 (え!?)
チェーザレは自分の目が信じられなかった。
妹の姿を見たからだ。
他人の空似かと思ってジッと見つめてみるが、間違いなく自分の妹だった。
(何で・・こんなところに!?まだ授業中じゃないのか!?)
チェーザレは思わず腕時計を見る。
時計はまだ午前中であることを示していた。
(学校、サボってるのか!?)
自分が見ているものが信じられなくて、チェーザレはさらに窓の外の妹をジッと見つめる。
ルクレティアは改造制服と思しき露出の高い制服を着ている上、よりにもよって肩に竹刀まで担ぎ持っている。
友達と思しき男子中学生7,8人と連れ立って歩いているが、いずれも髪を染めていたり、鼻や耳にピアスをしていたり、あるいはだらしない感じに服を着崩している。
どの子も不良っぽい感じを漂わせていた。
(どう・・いう・・こと・・なんだ・・?)
チェーザレはすぐにも支払いを済ませると店を飛び出す。
そして血相を変えて後をつけ出した。


 (どこだ!?どこに行ったんだ!)
一時間近くに渡って妹を尾行していたものの、不意にルクレティアを見失ってしまい、思わず動揺しかける。
チェーザレは必死の形相を浮かべつつも、近くの通りや店をしらみつぶしに探してゆく。
やがて、ある狭い路地の突き当りを通りがかったときだった。
 路地の奥から怒号や何かがぶつかりあう音が聞えてきた。
(何だ?)
思わずチェーザレは路地を覗き込む。
すると顔を顰めたくなるような光景が目に飛び込んできた。
 チェーザレの目の前で繰り広げられていたのは喧嘩。
それも二人や三人ではなく、少なくとも双方合わせて15人くらいはいた。
不良グループ同士の喧嘩らしく、違う学校の制服を着た中学生達同士が殴りあっている。
どうやら片方のグループが優勢らしく、違う制服を着ている学生たちを押していた。
その中で特に目立っているのが一人いた。
喧嘩の当事者達の中では唯一の女子で、竹刀を振り回して近寄ってくる相手グループの男子を容赦なく叩きのめしている。
 (あっ・・・・!!)
チェーザレは竹刀を振るっている女子中学生の姿を見るや、声を出しそうになる。
他校の男子を竹刀で引っ叩いているのは、誰あろう自分の妹だったからだ。
「ちくしょうっ!覚えてやがれっ!」
負けを覚ったのか、相手方のボスらしい男子が捨て台詞を残して逃げ出す。
ルクレティアは馬鹿にしきった笑みを浮かべるや
「何馬鹿言ってるのよ!あんたみたいなクズ顔覚える価値もないわよっっ!」
と容赦なく言い放つ。
相手グループは屈辱感に打ち震えるが、叶わぬゆえの悲しさかすたこらと逃げ去った。
「アハハハハハ、惨めねえ。負け犬って!」
ルクレティアは追い討ちとばかりにさらに屈辱感をあおる言葉を投げつけてやる。
喧嘩相手が逃げ去ると、ルクレティアは仲間の男子を見回した。
「あんたたち、怪我は?」
「平気っすよ。それよりルクレティアさん、強いッスねぇ」
「ふん。あいつらが弱すぎるのよ。全く・・つまらないわ・・」
ルクレティアはそういうと肩をそびやかす。
彼女はこの街の不良中学生の間では名の知れた腕自慢だった。
「えへへ、でもおかげで俺らも鼻が高いッスよ~~」
子分の一人が笑いながらルクレティアをおだてる。
「おだてたって何も出ないわよ」
ルクレティアはそう言いつつもどこか嬉しそうだった。
 「本当だねぇ。凄い強いんだね」
「ふふん!今さら何を言ってるのよ。あんな馬鹿どもとは違うんだから!」
「もしかして他にもやっつけたのかい?」
「決まってるじゃない。もう、20個くらいはグループを潰してやったわよ」
ルクレティアは自分に対する問いかけに自信満々で答えてやる。
答えるごとに彼女は胸を張り、表情も自慢するようなものに変わってゆく。
「へぇ~~。凄いな。連戦連勝なんだね」
「当たり前よ。今じゃ『無敗のルクティ』なんて呼ばれてるわ」
「家族は知ってるのかい?」
「は?何言ってるのよ!話すわけないじゃないの!」
「そうだねぇ。ばれたら絶対怒られるからねぇ」
「当たり前でしょう!何当たり前なこと言ってるのよ!」
「そうだよねぇ。ばれたら絶対お仕置きされるからねぇ」
「っていい加減にしなさいよっっ!人の神経逆なでするようなことばかり言うんじゃないわよっっ!!」
堪忍袋の緒が切れたルクレティアがとうとう子分たちに向かって怒鳴り散らした。
「って俺らそんなこと誰も言ってないッスよ~」
取り巻きの男子達は口々にそう言った。
「な・・何ですって・・・ハッ・・・」
男子達の背後にいるひときわ背の高い影にルクレティアはハッとする。
同時に表情が強張った。
「やぁ・・ルクレティア・・」
チェーザレは進み出たかと思うとルクレティアに静かに声をかけた。


 「ルクレティアさん、誰ッスか?このリーマン?」
子分の一人が思わず自分たちの番長に尋ねた。
「私はこの子の兄です。君たちはルクレティアの友達かな?」
「い・・一応・・子分ッス。ルクレティアさんは俺らの番・・」
そこまで言いかけたところでルクレティアの竹刀が飛んだ。
殴られた男子は思わず顔を押さえる。
ルクレティアは殺気の籠った表情で「余計なこと言うんじゃない!」と無言の圧力をかけていた。
「え・・えへ・・い、意外ねえ。に、兄さんとこんなところで会うなんて・・・」
ルクレティアは誤魔化そうとするが、それは無理だとわかっているのか、表情も微妙に引きつる。
「私もだよ。本当に意外だよ」
チェーザレは静かな声で言うと、取り巻きたちの方を向く。
「君たち、済まないけどルクレティアはこれから用事でね。悪いけどもう帰らなくちゃいけないんだよ」
「えっ。そうなんスか?ルクレティアさん?」
「い・・いや・・そんなことは・・」
ルクレティアは否定しかけるが、チェーザレが自分の方をジッと見ていることに気付く。
表情こそ笑顔だが目は笑っていない。
それどころか怒りをたたえている。
もし、嘘でもつこうものならこの場でお仕置きされそうな雰囲気だった。
「ま・・まあ・・そんなところよ。私は用があるから帰るわ」
ルクレティアは威厳を繕うと、悠々と女王のような足取りで歩き出す。
チェーザレが肩に手を置くと二人で連れ立ってその場を去っていった。


 (うう・・き・・気まずいわ・・)
二人で連れ立って歩きながら、ルクレティアは焦った様相を見せていた。
チェーザレはジッと押し黙って何もしゃべらない。
ルクレティアは気まずい雰囲気を何とかしようと、幾度か話しかけようとしたがそのたびにチェーザレに冷ややかな目を向けられて黙らざるを得なかった。
やがて、二人は自宅のマンションにたどり着く。
部屋に戻って来るとチェーザレは妹を自分の部屋に呼び、お互いに床に座って対峙した。
 「さて・・・ルクレティア・・・」
「な・・何・・?兄さん・・・?」
ルクレティアは恐る恐る尋ねる。
「これは一体どういうことかな?兄さん何も聞いてないよ?」
「だ・・だって・・言ったら兄さん怒る・・じゃない・・・」
「そうだね。だから隠したり嘘ついてたりしたんだね?」
兄の問いにルクレティアは沈黙する。
だが、それが何よりも肯定していた。
「ルクレティア、隠し事をしたり嘘をついたりするのはいいことかい?」
「わ、悪い・・こと・・・」
「そうだね。そういうことする悪い子はどうなるのかな?」
チェーザレが尋ねるとルクレティアの表情が変わった。
「やあ・・嫌あっっ!!」
叫ぶと同時にルクレティアは逃げ出そうとする。
「こら!逃げるんじゃない!」
チェーザレは素早く妹を捕まえると自分の傍に引き寄せる。
「やだやだやだやだやだ~~~。兄さん離してってばぁ~~~!!」
チェーザレは暴れる妹をベッドまで連れてゆくとベッドに腰を下ろして妹を膝に乗せた。
「離して~~。お仕置きは嫌ぁぁぁ~~~~!」
ルクレティアはこれから待ち構えているものから逃れようと必死にチェーザレの膝で暴れる。
「何を言っているんだ。隠し事したり嘘までついたりして!そんな悪い子は嫌って言うほどお尻を叩いてお仕置きだよ」
チェーザレは厳しい声でそう宣言すると妹のスカートを捲り上げ、パンツを降ろす。
あっという間に形のいい、白くてきれいなお尻が姿を現した。
「ひゃ・・ひゃひぃ・・・」
お尻に外気を感じたルクレティアは恐怖をあらわにする。
「さぁ・・覚悟はいいね?」
チェーザレはそういうとゆっくりと右手を振り上げた。


 バアッシィィィィンンン!!
容赦のない一撃がルクレティアのお尻に勢いよく叩きつけられる。
骨にまで響きそうな衝撃がルクレティアのお尻をズンと突き抜けた。
バアアアアン!ビタアァァアアンンン!バアシィィィンン!バチィィィンンン!
「きゃあああ!ひゃあああ!痛ぁぁぁあああいいい!」
ルクレティアはあまりにも強烈な痛みに悲鳴をあげる。
「や・・やだぁ、兄さん・・痛ぁぁぁい・・・」
あまりの痛さにルクレティアはまだ数打にも関わらず涙を浮かべ、振り返って兄の顔を見やると懇願しようとする。
「当たり前じゃないか。お仕置きなんだから」
「だ・・だからって・・痛すぎるわよぉ・・・ひぃん・・・」
「何言ってるんだい。まだお仕置きは始まったばかりじゃないか。今日は幾ら泣いても喚いても許してあげないよ」
「そっ・・・そんなっっ!きゃあああ!」
ルクレティアは兄の発言に愕然とする。
だが、その間もなく容赦のない平手打ちに悲鳴をあげた。
 バアシィィィィィンンン!ビタァァァァアアアアンンン!バアチィィィィィンンン!バアアアアアアンン!バシィィィィンンン!
「きゃああ!ひぃひぃぃぃ!痛ぁぁぁいいいいい!」
バシィィィィンンンン!ビタァァァンンンンン!バアッシィィィンンンンン!ビッシャァアアアアンンンン!
「全く・・お前って子は・・・私に隠し事・・して・・・」
ビタァァァァンンン!バアチィィィンンンンン!ビシャアアアアンンン!ビタァァァアアアアアアンンン!
「ひぎぃぃぃ!痛ぁああああい!やぁあああ!やめてぇぇぇ!」
「しかも・・・学校行くように思わせといて街で遊ぶなんて・・嘘ついたってことじゃないか!」
ビタアアアアンン!バアシィィィンンン!バチィィィィンンンン!バアアアアンンン!
「やぁぁぁんん!痛ぁぁぁいいい!ひゃああんん!」
バシィィィィンンンン!ビタァァァアアアアンンン!
「しかも・・あんな・・喧嘩沙汰までやってたんだね!本当に・・悪い子だね!」
バアッチィィィィンンンン!ビィッッタアアアアンンンンンン!ビバアッシィイイン!
「ひみぎゃああ!ふうぇぇええ!ひぃひぃぃんんん~~~」
ルクレティアはお尻の痛みにボロボロと涙を零す。
「うえっ・・ひっくぅ・・ごめっ・・ごめんなさぁ~~い。兄さんごめんなさぁ~~い。あ・・謝る・・からぁ・・もう・・許してぇ・・・」
ルクレティアはボロボロ泣きながら必死で謝り、許しを請う。
だが、その程度ではチェーザレの怒りは収まらなかった。
「駄目だよ。今日は兄さん本気で怒ってるからね。言っただろう?幾ら泣いても謝っても今日は許してあげないよ」
「そっ・・そんなっ・・もう・・無理よぉ・・」
「無理でも駄目だよ。たっぷり反省しなさい」
チェーザレはそういうと平手を振り下ろす。
激しい打撃音と中学生くらいの子供の悲鳴が入り混じり、奇妙な音となって室内にこだました。


 「ごべん・・なじ・・ゃい・・がへん・・ぎゃな・・び・・。ば・・ばんじぇ・・び・・ひだぐゎら・・・ぼ・・ぼう・・じゅるびで・・よぉ・・・」
ろれつの回らない舌でルクレティアは必死になって許しを請うていた。
もはや体力も気力も失せたのか、兄の膝の上でふやけたようにぐったりしている。
顔は涙と鼻水でグジョグジョに濡れており、お尻は三倍近くは腫れ上がってワインのような見事な赤色に染まっている。
「本当に反省してるのかい?」
お尻を叩きながらチェーザレが妹に尋ねる。
ルクレティアは首を縦に振って答える。
「じゃあ・・何が悪かったんだい?言ってご覧?」
チェーザレはお尻を叩く手を弱めると尋ねた。
「に・・兄さんに・・う・・嘘ついたり・・隠し事・・してた・・・」
パアン!パシィンッ!パアンッ!
「そうだね。それから?」
「う・・嘘ついて・・・街で遊んでたり・・喧嘩したり・・してた・・・」
「そうだね。じゃあ、どうして兄さんがそれで怒ったのかわかるかい?」
「え・・・ええと・・・」
兄からの問いにルクレティアは必死に答えようとする。
だが、中々頭が回らず、答えが全然浮かばない。
パシィンッ!
「きゃああ!も、もう・・やだあっっ!」
ルクレティアは悲鳴をあげるや、兄の膝から逃れ出そうとする。
「もうやだじゃないだろう!兄さんがどんな気持ちだったかお前にはわかるのかい!」
胸にジッとしまっていたものを叩きつけるかのような激しい声でチェーザレは妹を叱りつけた。
兄の言葉にルクレティアは思わず立ち止まる。
チェーザレはお尻を叩く手を止めると、妹を抱き上げて膝に座らせた。
 「いいかい?よく聞いておくれ。私は別にお前が学校サボって街で遊んでたりしたのを怒ってるわけじゃない。いや、勿論それも中には入ってるけど、理由としてはそんな大したものじゃないよ。いいかい、街には色々と子供にとって危ないもの、恐ろしいものがあるんだよ。わかるだろう、麻薬とか危ない人がたむろする店とか?」
「う・・うん・・・」
「そういうところにお前が行って何かあったりしたら嫌なんだよ、兄さんは。それに他校の生徒と派手な喧嘩とかもしたそうだね?」
兄の問いにルクレティアは黙って頷く。
「そんなことをしてればたくさん恨みを買うし、そうすれば中には口では言えないくらいひどい方法でお前に仕返ししようっていう者も出てくるかもしれないだろう。そんなことになったら兄さんがどれだけ心配するかお前は考えたかい?」
「それに・・これはあくまで兄さんの個人的な気持ちだけど・・お前が嘘ついてたり、隠し事してたのが・・兄さんには悲しかったし、辛かったんだよ。まあこれは兄としての嫉妬みたいな部分もあるけどね」
チェーザレは苦笑すると再び妹と向き合った。
「それはともかく・・・お前に何かあったらと思うととても心配なんだよ。何よりも大事な可愛い妹なんだからね、お前は」
そういうとチェーザレは妹を抱きかかえる両腕に力を込める。
「えっく・・ひっく・・心配・・かけて・・ごめん・・なさい・・」
「わかってくれればいいんだよ」
チェーザレは優しい表情を浮かべると妹をギュッと抱きしめた。


 「ひゃあんっ!冷たぁいっっ!」
真っ赤に腫れ上がったお尻に冷たいタオルを乗せられたルクレティアはその冷たさに思わず声をあげる。
「こらこら、駄目じゃないか。タオルが落ちちゃうだろう?」
「だってぇ~。冷たいんだもん~~~」
ルクレティアは兄の言葉に思わず拗ねる。
「仕方無いだろう。こうしないとお尻が治らないんだから」
「って兄さんがぶったんじゃないの~~~」
妹の言葉に思わずチェーザレは苦笑する。
だが、腕時計を見やると苦笑いを止めた。
 「それじゃあ兄さんはまた仕事に行ってくるから。学校には一応風邪で休んでるって連絡はしておいたから、おとなしく休んでるんだよ」
「わかってるわよ、それくらい」
「じゃあ火の元には気をつけるんだよ」
チェーザレは妹にそう言うと部屋を後にしようとする。
「兄さん~。また朝みたいに『ハグ』してぇ~~」
不意にルクレティアが甘えた声でおねだりして来た。
チェーザレは苦笑いすると
「わかったよ」
と言って戻って来る。
チェーザレはベッドにうつ伏せに寝ている妹を起こすとギュッと抱きしめ、額にキスしてやる。
「えへへ、兄さんだーい好き」
「私もだよ。でも、兄さんをビックリさせるようなことはもう勘弁しておくれよ」
「うん・・ごめんね、兄さん」
二人はしばらくの間互いに抱きしめ合う。
やがて、チェーザレは再びマンションを後にした。

 ―完―
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