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神父物語5 佐々木の秘密1



 (注:今回は佐々木の実家が剣道道場で、佐々木は武術の達人という設定をどうしても活かしたかったので普段とは全く雰囲気の違うものになっております。ですので読まれる際にはその辺のことをお含み置きください)



 「む~~~~~」

今井は不機嫌な表情を浮かべて唸っていた。

彼は応接室のドアを睨むようにしてジッと見つめている。

扉の向こう側では佐々木が来客と話している最中だった。

やがて、話が終わったのか扉が開く。

同時に佐々木と来客が出てきた。

来客はくたびれたスーツにコート、あまり特徴のない平凡な顔立ちと身体つきの持ち主。

無駄なく引き締まり見事に鍛え上げられた身体と男らしさや精悍さを備えた端正な面立ちをした佐々木と並んでいると見事なまでに対照的に見えた。

「それじゃあ佐々木さん、頼むよ」

「わかったよ・・しょうがねえな・・・」

くたびれた格好の男に対して、佐々木は渋々といった感じで答える。

目立たない男はそれを聞くといそいそと帰っていった。



 同時に佐々木も自分の部屋へ行こうとする。

「佐々木さん!」

不意に今井は呼びかけたかと思うと佐々木の前に立ちはだかった。

「何だよ、信幸?」

「また、出かけるんですか?」

今井は開口一番、そう尋ねた。

今井は今までに3,4回、さっきの目立たない格好の男が教会にやって来たのを見たことがある。

そのたびごとに佐々木が私服に着替えてどこかへ出かけてゆくのだ。

「あ・・ああ・・どうしても急用が出来たんでな・・・」

「ふ~~ん」

今井は不信を露にした表情で佐々木を見つめる。

(また・・浮気と疑ってるな・・)

佐々木は思わず苦笑しそうになる。

以前、実家の兄の頼みが原因でしばらく構ってやれなかったことがあったとき、今井が浮気されてると勘違いして騒ぎを起こしたことがあったのだ。

幸い誤解は解いたが、それでも時々佐々木の行動に不審を覚えると今井はそういう疑いを抱くのである。

だが、あいにくと誤解を解いている時間はない。

「とにかくどうしても行かなきゃなんないんだよ。わかってくれ」

「わかりましたよ」

今井は佐々木の予想に反して意外とあっさり引いた。

佐々木は自分の部屋へ行って着替えようとするが不意に立ち止まる。

「あっ。信幸、一つだけいいか?」

「何です?」

「俺が帰ってくるまで絶対に教会から一歩も外に出るなよ?」

「どうしてです?」

「ワケは言えん。だが、間違いなくお前のためだ。わかってくれ。すまん!」

佐々木は心底からの真剣な表情で今井にそういうとその場を後にした。

 (絶対何か隠してるよね・・・)

今井は佐々木の口振りや言動から確信する。

(そうだ・・・)

不意に今井は佐々木の後をつけてやろうという考えを思いついた。

佐々木のいう通りにしても不審が募るばかりだ。

それならいっそ、後で怒られてでも後をつけるなり何なりして佐々木の秘密を調べたほうがいい。

(そうと決まれば・・善は急げってね!)

今井は一目散に自分の部屋に戻るとあっという間に私服に着替える。

そして、同僚や佐々木にばれないように部屋の窓からこっそり教会を出て行った。



 「ここか・・・・」

佐々木はそうつぶやくと、目の前にそびえ立っているビルを見上げた。

使われなくなって随分経つのだろう、今にも潰れてしまいそうなくらい、見た目はボロボロに荒れ果てていた。

佐々木は動きやすい服に着替えており、手には細長いものを風呂敷で包んだものを持っている。

「じゃあ・・行きますか・・」

佐々木を訪ねてきた男はそういうと、ゆっくりとあたりを警戒するような素振りで工場に向かって進んでいった。

 (こんなところに何の用があるの?)

今井は佐々木たちが廃ビルに入ってゆくのを見届けると、思わず首を傾げる。

だが、今井は佐々木たちを見失わないように後をつけていった。

 「うわぁ・・」

今井は中へ入ってみて改めてビルの荒廃ぶりに声を漏らす。

(何か・・出て来そうだよねぇ・・・)

そんな考えが浮かんでくると、ますますあたりが不気味に見えてきた。

 コツン・・カツン・・。

(え?)

不意に今井は自分の耳を疑った。

足音らしき音が聞えたからだ。

思わず今井はあたりを見回す。

だが、誰もいない。

(何だ・・気のせいか・・)

と思ったときだった。

不意に何か真っ黒いものが数m前方の廊下を横切っていったように見えた。

(な・・ななななな何!?一体!?)

今井は廊下の奥にじっと目を凝らす。

今井は額にじっとりと脂汗を滲ませている。

(な・・何か・・もの凄くやばそう!!)

今井は慌てて後ろを振り向くや、来た道を戻ろうとする。

だが、走り出そうとした瞬間、何かに思い切り激突し、床に大の字に転んだ。

「っ痛~!一体な・・・」

今井は鼻を押さえながら目の前を見ようとする。

だが、強烈な当身が今井を襲い、相手を確かめる間もなく、今井は床に崩れ落ちた。



 「ううん・・・・」

今井は目を覚ますと、自分が広いどこかの部屋の片隅に転がされていることに気がついた。

(あれ・・?ここど・・)

同時に今井は身体が何かに締め付けられていることに気付く。

不審に思って身体を見てみると、自分の身体が縄で縛り上げられていることに気がついた。

(なななな!何これ~~~!!!)

あまりの事態に今井は声も出ない。

動揺のあまりか、今井は立ち上がろうとして、脇に転がっているものに身体をぶつけてしまう。

「うげぇっ・・・」

ぶつかったものが声をあげたので思わず今は隣を振り向く。

するとあろうことか、自分と同じように人が縛り上げられて転がされていた。

 「ああっ!」

今井は縛られている人物を見るや、思わず声をあげる。

隣にいたのは誰あろう、佐々木を教会から連れ出したさえない男だったからだ。

「ありゃ・・お前さん・・佐々木さんとこの教会の?」

男の方も今井に気付いたのか、声をかけてくる。

「だから何だって言うんです?人にもの聞くんならそっちが名乗るのが礼儀でしょ」

今井は不機嫌な表情になると、ぶっきらぼうに返事をする。

この男に佐々木を取られたような気持ちだったので、いい感情を抱いていないのだ。

「そりゃそうだ。私は刑事の長谷部ですわ。佐々木さんにはときどき稽古つけてもらってます」

「ふ~ん・・そうなんだ・・・」

今井はジロジロと疑っている目で長谷部刑事を見やる。

「で?その刑事さんが佐々木さんこんなとこに連れてきて何してるんです?」

不信感極まりない声で今井が尋ねると、刑事は苦笑いして言う。

「それはちょっと・・警察のメンツってもんがありましてねぇ・・・」



「そいつは俺が教えてやるよ」

不意に全く知らない声が部屋に響いた。

途端に長谷部刑事の表情が変わる。

長谷部は緊迫した表情で声のした方向を振り向く。

振り向いた長谷部の目は一人の男の姿を捉えていた。

 男は180cmはありそうな背丈と無駄なく引き締まり見事に鍛え上げられた身体の持ち主。

手入れがされていないのか、ボサボサな黒髪と無精ひげを生やしたその姿は一見すると自堕落に見えるが、その目には餓えた肉食獣の恐ろしさと獰猛さを感じさせるものがあった。

「ぶ・・仏生寺(ぶっしょうじ)・・」

長谷部は男の姿を見るや、乾いた声でつぶやく。

男の名は仏生寺弥一(ぶっしょうじやいち)。

フリーのヒットマンをなりわいとし、少なくとも20件の暴力団抗争においてその凶刃を振るったと警察では明らかにしていた。

彼こそが、長谷部がこのビルに求めた人物であった。



 (こ・・この人・・)

今井は現れた男を見ると背筋が寒くなった。

素人の彼にすら、仏生寺の身体から危険な臭いがするのを感じ取ったのである。

弥一はゆっくりと二人に近づいてくる。

今井は弥一が近づくにつれ、胃に猛烈な圧迫感を感じた。

同時に脂汗がジットリと顔に浮かび上がり、足がブルブルと震えている。

仏生寺は今井の目の前に立つとかがみ込み、今井の顔をしげしげと見つめた。

「ん?お前、佐々木のところの平神父じゃねえのか?」

思わぬ言葉に今井はビックリ仰天する。

「な・・なな何で知ってるの!?」

今井の驚きの様子に、弥一はクツクツと笑ってみせる。

「クックックッ・・俺をム所に送った野郎に関する情報なら全部集めてるに決まってるだろうが・・お前、頭のめぐり悪いのかよ?」

「って余計なお世話っっ!!」

思わず今井は言い返す。

だが、ふと今井は弥一の言葉にハッとした。

(今何て言ってた?佐々木さんが刑務所送りにした?どういうこと?)

途端に疑問が膨らみ、今井の脳内でグルグルと回りだした。

「お前・・何にも知らねえんだな・・まあ、当たり前か。だったら教えてやる。佐々木の奴はなぁ、そこでおネンネしてるデカ野郎に頼まれて、俺みたいな凶状持ちをとっ捕まえる手伝いをしてんだよ」

「えええっっ!!ちょっと!刑事さんそれ本当!?」

さすがに今井も予想もしない話だったためにビックリする。

思わず隣の長谷部に尋ねていた。

「あ・・ああ・・佐々木さんはどんな腕利きの警官より・・腕も立つし・・度胸もあるんで、じつは時々手伝ってもらってるんだよ・・表沙汰にはしてないんだが・・・」

「嘘・・・」

今井は佐々木の秘密の顔に呆けたような表情を浮かべていた。

そんなこと佐々木は一度も教えてくれなかったからだ。

だが、直後、今井の表情が変わる。

どんどん険悪なものに変わったかと思うや、いきなり絶叫したのだ。

 「佐々木さんの・・バカ―――――――ッッッッッ!!!!!!」

そんなことを言ったかと思うや、駄々っ子のように両足をバタバタさせる。

「僕はそんなこと知らないのに!!何でこんなどこの馬の骨だか知らない奴が佐々木さんのこと知ってるのさー!ムキ――――ッッッ!!!悔しい――――ッッッ!!!」

そう、今井は幼馴染みでなお且つ恋人のはずの自分が知らないことをこの男が知っていた為に、癇癪を起こしたのである。

今井は悔しくて悔しくて喚き騒ぎ、仏生寺に恨みがましい視線を向ける。

(何だこいつは・・・)

今井の反応に弥一は思わず呆れる。

あまりにも子供な、いや幼い反応だったからだ。



 「誰がバカだって?」

不意に声が部屋にこだました。

ハッとした表情で弥一は入り口を振り返る。

部屋の出入り口には佐々木の姿があった。

「さ・・佐々木さぁん・・・」

意中の相手の登場に今井はすぐにも機嫌を治し、佐々木の元へ駆け寄ろうとする。

だが、弥一は今井の縄目を掴むや、容赦なく引き戻し、再び転がした。

「久しぶりだなぁ・・・佐々木・・・」

仏生寺は長いコートを脱ぎながら言う。

弥一がコートを脱ぎ捨てると、背中から無鍔の日本刀が姿を現した。

「全く・・・20件以上もの殺人容疑で死刑になったはずじゃなかったのか?」

「くくく・・あいにく生き延びて脱走したんだよ」

そう、弥一はその悪事の内容から絞首刑にされたのだが、死ななかったために終身刑に減刑され、北海道の刑務所に送られることになった。

だが、途中で脱走し、会津までやってきたのである。

「海外に高飛びする前にお前にお礼参りしとこう思ってなぁ・・ククク・・覚悟しなっ!」

弥一はそういうと背中から無鍔の刀を引き抜いた。

「ったく・・逆恨みも甚だしいな・・」

佐々木は嫌そうな面倒くさそうな顔を浮かべながら持っていた包みを取る。

すると中から脇差が現れた。

佐々木は柄を握ると脇差を抜き放つ。

すると鞘の中から板状の鉄の棒が現れた。

佐々木が持っていたのは鉄刀(てっとう)という刀に似た棒状の武器だ。

元々江戸時代の警察が相手を殺さずに逮捕する為に使っていた武器である。

佐々木はあくまで民間人でしかも神父という立場から、警察に協力して凶悪犯を捕まえるにしてもこういう非殺傷性(といっても殴られれば痛いには違いないが)の武器をもっぱら使っているのである。



 ゴクリ・・・。

長谷部は二人がそれぞれ武器を抜いたのを見るや、息を呑む。

長年、刑事として危ない目にも会ってきた彼には、場の雰囲気が変わったことに気付いたのだ。

 佐々木も弥一も武器を構えたまま、じっとにらみ合う。

やがて、二人はゆっくりと互いに右に向かって歩き出した。

端から見ている長谷部と今井がジリジリしそうな動きで二人の位置が入れ替わる。

同時に弥一が動きを見せた。

「はああっっ!!」

弥一は気合と共に突きを繰り出した。

切先が数度、間髪いれずに佐々木を襲う。

佐々木は鉄刀を巧みに捌き、切先を払う。

金属のぶつかり合う音と共に火花が幾度も飛び散った。

数回打ち合うと今度は佐々木が鉄刀を振るって弥一の懐に飛び込む。

(しまったっ!!)

弥一の持っている刀は刃渡りだけで60cm、間合いがある場合には有利だが懐に入られると、脇差サイズの佐々木の武器の方が有利だった。

弥一は刀の柄を使い、佐々木が振るう鉄刀を受け流す。

このまま佐々木が押し切ると誰もが思ったときだった。

 ドゴォッッ!!

佐々木の胸を鈍い、だが強烈な衝撃が襲った。

そのまま佐々木は吹っ飛び、3mほど後ろの壁に叩きつけられる。

「くっ・・かはっ!」

思わず佐々木は胸を押さえかけるが、その間に刀を真っ向から振り上げた弥一が迫ってきた。

間合いを詰めるや気合と同時に弥一が刀を振り下ろしてくる。

とっさに佐々木は横に転がるようにしてかわす。

刀が壁に叩きつけられる同時に、ガラガラという音と共に厚さ30cmのコンクリの壁が高さ1m、幅1mにも渡って崩れ落ち、穴が空いた。



 「!!!!!」

今井は弥一の人間離れした剣の威力に驚いた。

思わず佐々木に対して心配そうな表情を向ける。

「安心しな・・佐々木さんは負けねえよ・・」

長谷部の言葉に思わず今井はムッとする。

「何でそんなこと言えるんですか!?佐々木さんが死んだり怪我したりしたらどうしてくれるんです!?」

「あいつはそんなタマじゃねえよ。まあ見てな・・・」

長谷部は緊迫しつつも佐々木に信頼の目を向けていた。



 佐々木は弥一と距離を取って対峙すると鉄刀を振り上げるようにして構える。

(来る!!)

弥一は相手の意図するところを悟り、身構える。

「秘剣・鎌鼬(ひけん・かまいたち)」

佐々木は静かに呟いたかと思うと視界から腕と剣が消えた。

空気を裂くような鋭い音が響いたかと思うと、今度は弥一が横へ転がって避ける。

直後、弥一の背後の壁に刃物で刻みつけたかのような、長さ数十センチほどの十字型の傷が出来た。

佐々木が目には映らぬほどのスピードで脇差を振るい、真空波を生じさせてそれを飛ばしたのだ。

これは秘剣・鎌鼬といい、佐々木の実家『精武館』に伝わる奥義の一つである。

 (危ねえ危ねぇ・・)

弥一は思わず冷や汗をかいた。

以前、佐々木に捕らえられたとき、この技で仕留められたのを思い出したのだ。

(だがなぁ・・こっちだって負けちゃいねえんだよ・・)

弥一はゆっくりと刃を下ろす。

「く・・来るぞ・・・」

長谷部は弥一の行動にごくりと息を呑んだ。

「ククク・・喰らえ・・土弾刃(どだんじん)!!」

弥一は叫んだかと思うとゴルフのスイングのような体勢で床を思い切り叩いた。

ドゴオッッッ!!

派手な音と共にコンクリの床がクレーター状にえぐれ、コンクリの塊が幾つも散弾のように広がって佐々木を襲う。

「むううっっ!!!」

とっさに佐々木は数度鉄刀をふるって真空波を飛ばし、コンクリの塊を迎撃する。

だが、同時に飛び出してきた弥一が真っ向から佐々木目がけて突きの体勢で突進してきた。

佐々木は身をそらして避けようとするも、コンクリが一発当たって仰け反る。

同時に弥一の突進の衝撃で独楽の様に回転しながら吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。



 「佐々木さんっっ!!」

思わず今井は叫ぶ。

同時に駆け寄ろうとする。

だが、長谷部が足をひっかけて転ばせる。

「痛あっ!何するのさぁっ!!」

思わず今井は抗議する。

「馬鹿っ!あんたがいったって佐々木さんを助けられるわけないだろうが!!」

「でも・・」

「あんた・・佐々木さんのことよく知ってるのか?」

「そりゃあ・・昔から・・家族ぐるみで付き合ってたし・・剣道強いのは知ってるけど・・でも・・」

「だったら信じろ!佐々木さんはあんな野郎にやられる人じゃねえ!」

「そ・・そんなこと言ったって・・」

そのとき、再び金属の打ち合う音が聞こえ出す。

二人が見てみると、弥一が佐々木を壁に追い詰めて剣をがむしゃらに振り下ろしていた。



 (くっ!このままじゃどん尻だっ!!)

佐々木は鉄刀で弥一の猛攻を防ぎつつもそう感じていた。

このままではいずれなますにされてしまうのは目に見えている。

(こうなったら・・・)

佐々木は腹を決めると、信じられないことに武器を捨ててしまう。

「死ぬ気になったかっ!くらいやがれっっ!!」

弥一はニヤリと笑うと真っ向から佐々木の頭目がけて剣を振り下ろそうとする。

直後、弥一は腹部に強烈な衝撃を感じた。

佐々木は身体を低くするやタックルの体勢でぶつかり、組み付いたのだ。

さすがの弥一も体勢を崩してしまう。

佐々木は弥一を壁際にうっちゃるや、同時に刀を敵から奪い取る。

佐々木は剣を奪い取ると、峰打ちの状態にして構える。

「秘剣・十字衝(じゅうじしょう)」

と呟くや、裂帛の気合と共に十字を描くようにして剣を振るう。

「おぐごおっっ!!」

弥一は胸の骨が砕けてしまいそうな衝撃を感じる間もなく、凄まじい轟音と共に壁を突き破って道路へ吹っ飛んだ。

弥一はゴロゴロとボールのように道路を転がり、道路の反対側のビルにぶつかってようやく止まる。

よろめきながら彼は立ち上がると、胸に大きな十字の跡が焼印でも押したかのようについている。

「ごぼおっ!がっはあっ!」

弥一は自分が飛び出したビルに戻ろうとしたが、力尽きたらしく、へなへなとその場に崩れ落ちるとそのまま気絶した。



 「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」

佐々木は荒い息を吐きながら、床に座り込んだ。

倒したとはいえ、相手も中々の強者、こっちも体力は相当使っている。

特に十字衝で消耗した体力が大きい。

渾身のスピードとパワーを込めて十字型に剣を振るい、強烈な衝撃波を生み出して敵を吹っ飛ばす。

鎌鼬よりも強力な奥義だけにこっちの身体への負担も馬鹿にならないのである。

だが、その技を使う必要があるほど弥一は強い相手だった。

佐々木は身体のあちこちがギシギシ言うのも構わず、縛られている長谷部と今井のところへ行くと、刀をふるって縄を切ってやる。

 「佐々木さぁ~~~ん!!よかったぁ~~~~!!!」

今井は縄を切ってもらうと同時に佐々木に思い切り飛びついた。

同時に泣きながら顔を擦りつける。

「おい・・今井・・長谷部が見てるだろうが・・」

「そんなのどうだっていいんです!それより無事でよかったあ~~~!!」

「そうか。心配かけたな・・だが、何でお前がここにいるんだ?」

佐々木は今井にそう問いかける。

今井は佐々木の問いに思わずヤバイといった表情を浮かべた。

 「長谷部さん・・悪いが二人きりにしてくれ・・。今井と大事な話があるんだ」

「わかった。俺は弥一の奴をふん縛って置く。応援もそろそろ来るはずだしな」

長谷部が出て行ったのを確認すると、佐々木は今井と対峙する。

「さて・・信幸・・どういうことか話してもらおうか?」



 ―続く―
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