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女悪魔ルクレティア・バルツィーニ7 初詣



 パラパラ・・・パラパラパラ・・・。
砂糖を思わせる粉雪が降り、おかげで街中見事な白色に彩られていた。
気温も寒く、息を吐けば真っ白に染め上がってしまう。
だが、そんな冬の寒さとは全く無縁な場所があった。
 「うわぁ・・・すごい人だかり・・・」
運動会などで使われる白天幕の下で大きな鍋をかき回しながら、高校生くらいに見えるその青年は呟いた。
天幕の外に広がっているのは人の壁。
皆手袋をした手をこすり合わせたり、口から白い息を吐き出したりしながら奥の本堂に向かっている。
 「こら!久也くん、余所見するんじゃないの!危ないでしょう!」
「わかってますよぉ。静香さんってばぁ」
青年こと会津久也は上司の静香に注意されると思わず口を膨らませて言い返す。
 ここは試衛市で最大の寺院、新撰寺(しんせんじ)の境内。
今日は元旦ということもあり、夜も明けない暗いうちから大勢の初詣客で賑わっていた。
「ううう~~。それにしても寒いよ~~」
久也は肌を刺す寒さに思わず震えてしまう。
「寒いのは皆同じよ、愚痴ばっかり言ってないで手伝いなさい」
「はぁ~い」
久也は気の無い返事で鍋を大きなしゃもじでかき回す。
ところで、何故この二人がこんなところにいるかというと、勤め先の所長がここの住職と懇意なため、正月の初詣客に無料で振舞う汁料理の料理等に寺の関係者だけでは人手が足りないので、所長や研究員がボランティアで手伝うことになり、そのからみで借り出されることになったというわけである。
 久也が寒さに震えながら鍋をかき回していたまさにそのときだった。
大勢の参拝客に混じって一人の女性が通り過ぎるのが偶然見えたのだ。
その女性を見るなり、久也は一瞬、動きが止まった。
(うわ・・・綺麗な人・・)
一目見るなり、久也はそう呟きそうになった。
 久也の目に映っているのは年は20代くらい、腰まで届く燃える炎のように見事な赤い髪とルビーを思わせる同色の瞳を持つヨーロッパ系と思しき白人女性。
その女性は髪に負けないほど見事な赤色のリボンをつけ、着物を着ている。
着物は見事な黒地に乱れ飛ぶ蝶と茶色の横線が入ったもので、赤い太帯をリボン結びにしてつけている。
その美貌のせいか、欧米人にもかかわらず着物姿が全く違和感が無かった。
 (凄い・・・)
久也は思わず見とれてしまう。
無意識に携帯を取り出すや、赤い髪の女性に携帯のカメラを向ける。
(こっち・・気付いてないよね・・?)
久也は相手が気付いていないのを願いつつ、カメラのスイッチを押そうとする。
突然、相手がこちらの方を振り向いてきた。
同時にカメラ目線になった状態で携帯が着物美人の姿を撮る。
直後、相手は久也の心を見透かすように意地悪く見える微笑を浮かべた。
 (ばれた!?)
その考えが頭をよぎるや、久也はやましさで後ろへ飛びすさる。
だが、飛びのいた先には不運にも別の鍋があった。
鍋は中身がグラグラと煮立っており、当然の如く熱くなっている。
触れたら火傷間違いなしなほど熱くなった鍋の横に飛びのいた久也のお尻が思い切り押し付けられた。
 「え・・・?」
久也が最初感じたのは鉄の感触だった。
だが、それはすぐに凄まじい熱さに取って代わられる。
ハッとした久也が後ろを振り返ってみるとズボン越しに熱い鍋の鉄板にお尻をしっかりと押し付けてしまっていた。
「あ・・・あ・・熱いよおおお~~~~~~~!!!!!!」
次の瞬間、久也はお尻を両手で押さえてあたりを転げ回った。
「久也くん!大丈夫!?」
慌てて静香が駆け寄り、久也を助け起こそうとする。
「うわぁぁああ~~~~~んんんっっっ!!!静香さぁ~~んんっっ!!お尻熱いよ~~!!うわああ~~~んっっ!!!!」
「大変だー!怪我人だーっ!」
「担架だ!担架持ってきてやれー!!」
あっという間にテント内は騒がしくなった。


 (ふふ・・どうやらうまく行ったみたいね)
着物の白人女性ことルクレティアは背後のテントで起こっている騒ぎを聞くと、口元に僅かな笑みを浮かべた。
「どうしたんだい?妙な顔して?」
一緒に歩いていたチェーザレが妹の表情に気付いたのか、尋ねてきた。
「ううん。何でもないわよ、兄さん。ちょっと思い出し笑いしただけ」
ルクレティアは慌てて誤魔化す。
「ならいいんだけどね。あんまりへんなことするんじゃないよ」
「わかってるわよぉ」
ルクレティアはわざと拗ねてみせると、そっと胸をなで下ろす。
(ビックリしたわ・・・。兄さんにイタズラがばれたかと思ったわ・・・)
 久也がお尻を火傷したのは実は事故ではない。
ルクレティアは久也が自分に見とれて隠し撮りしたのに気付くや、イタズラ心を起こしたのである。
それでワザと向こうを向いて笑みを浮かべてやり、ビックリさせてやったのだ。
同時に暗示をかけて鍋に思いっきりお尻を押しつけてしまうくらい飛びのくように仕向けたのだ。
 ただ、暗示をかける際にはかなり慎重にかけた。
兄にばれると叱られるかもしれないからだ。
特に寺院や神社のような場所で魔法を使うと、そこを住処とするその国の神霊たちとトラブルになる可能性もあったからである。
 ちなみに、二人が何故日本にいるかというと冬のバカンスで滞在中だからである。
今日は元日ということで、人間がよくやっている初詣とやらに行ってみようとルクレティアが思い立ち、チェーザレは妹のお願いにより一緒に来たということだ。
悪魔が初詣というのも妙な話ではあろうが、そこのところは取りあえず置いておこう。


 やがて人ごみの後ろに本堂が見えてきた。
大寺院らしく大きな建物だった。
装飾も見事で柱や欄干などには日光東照宮もかくやというほどの、手の込んだ彫刻が施されている。
その出来栄えは本当に素晴らしく、悪魔のチェーザレやルクレティアも思わず声を漏らしてしまうほどだった。
「へぇ・・・人間にしてはやるじゃないの・・・」
ルクレティアは高慢な姿勢はそのままながらも、彫刻の見事さに思わず感嘆の声を漏らす。
「ふむふむ・・さすがに見事なものだな・・・」
さすがに悪魔がご本尊を拝んだりお賽銭をあげたりというわけにはいかないので、他の初詣客が中を拝観したり、賽銭を投げるのには背を向けて表の境内の方へ戻ってゆく。
 「ねぇ兄さん・・・」
「何だい?」
チェーザレは手を繋ぎながら歩いている妹の呼びかけにニコリと微笑みながら答える。
「本当にありがとう。こんな綺麗なキモノ買ってもらって、しかも初詣まで一緒に来てくれて」
ルクレティアは普段の傲慢な調子など全く見られない謙虚な様子で兄に礼を言う。
ルクレティアが着ている着物は、妹のおねだりによりチェーザレが買ってプレゼントしたものだった。
「いいんだよ。お前は私の妹なんだから。お前のお願いを聞いてやるのは当たり前じゃないか」
チェーザレはそういうと妹の頭を撫でる。
「えへ。兄さんだーい好き」
ルクレティアは子供のような無邪気な笑みを浮かべると兄に抱きついた。
「こらこら。人のいる前でそういうことはやめなさい」
思わずチェーザレもたしなめるが、どこか満更でもない様子だった。
「何よ~。兄さんだって嬉しいくせに~~」
「ははは。これは一本取られたみたいだな。さぁ、帰ろうか?
「うん・・」
二人は仲睦まじい様子を見せながら、境内を後にした。


 「ふぅ・・・・。さすがに冷えたなぁ・・・」
暖炉の傍で暖まりながらチェーザレはそんなことをつぶやいた。
あの後、滞在中の屋敷に帰ってきたチェーザレは居間ですっかり冷えた身体を暖めていた。
ちなみに、バルツィーニ家は日本にも屋敷を持っていた。
傘下の種族には日本とも縁のある種族がいるため、バルツィーニ家も日本の妖怪達と関わりを持っているからである。
 チェーザレが淹れたてのホットコーヒーで身体を暖めていると、ふと二階が騒がしくなった。
(何だ?)
思わずチェーザレが居間を出て玄関前の広間の方へ向かう。
やがて、見事な御影石造りの広間と漆で見事な赤色に染められた広い階段が見えた。
 ガタンがタンガタンガタンガタンガタアンッッ!!
突然、屋敷中に響き渡るか思うくらい激しい物音が鳴り響く。
(何だ!!一体!?)
チェーザレは急いで階段の下へ駆けつけた。
階段のふもとへ駆けつけたチェーザレは思わずハッとする。
何と、階段から誰かが転げ落ちてきたからだ。
 階段を転がり落ちてきたのは狐の耳と尾を持つ若者たち。
二人とも狐の精だった。
狐の精たちがよろよろと起き上がろうとすると、コツンコツンと階段を降りてくる足音が響く。
狐達が階段を見上げるとルクレティアの姿があった。
ルクレティアは普段のコートにボンテージ風の色っぽい服に身を包んでいる。
その顔はこれ以上ないほどの憤怒に彩られていた。
 「お・・お許しを!!お許しをっっ!!」
狐たちは必死の表情で許しを請う。
ルクレティアは怒りの表情のまま、ゆっくりと階段を降りてくる。
階段を降りながらルクレティアは手をゆっくり伸ばし、掌を狐達に向ける。
(いかん!?)
チェーザレは妹が何をしようとしているのかすぐに気付いた。
彼女は相手を塵一つ残らないほどに焼き尽くすつもりなのだ。
 ルクレティアは悪魔の言葉で呪文を詠唱する。
掌に赤い炎の玉が浮かんだかと思うとどんどん燃え上がる。
やがて、詠唱が終わると同時に巨大なドラゴンの姿をした炎が狐の召使い二人目がけて襲いかかった。
「ひぃえええええええ!!!!!!!!」
恐怖のあまり狐の精たちは悲鳴を上げる。
その髪は老人のように真っ白になり、恐ろしさで二人とも失禁してしまう。
炎の塊が今にも二人を包み込もうというところで、チェーザレが飛び出し、手を炎に向かってかざした。
 チェーザレの手が光ったかと思うと強烈な冷気が炎に向かって吹きつけられる。
炎は冷気により完全にかき消され、消滅した。
妹の魔法を打ち消すとチェーザレはゆっくりとした足取りで階段を登ってゆく。
そして、妹の元へたどり着くと口を開いた。
「これはどういうことだい?」
「に・・兄さんには関係ないでしょ!」
「そういうわけにはいかないよ。あの者たちは私の家臣だからね。何か処罰されることがあったにせよ、お前には処罰の資格がないのはわかっているだろう?」
「そ・・それは・・」
ルクレティアは思わず口ごもる。
家来を処罰する権限はあくまでもその主人にある。
ルクレティアが灰も残さず消滅させてしまおうとした狐の精たちはチェーザレの家来であったため、たとえ明白な処罰理由があっても、ルクレティアが兄の許可なく処罰することは出来なかった。
「とにかく・・・事情を聞こうか。こっちへ来なさい・・」
チェーザレは静かだが有無を言わせない調子で言うと妹の手を取り、ルクレティアの寝室として当てられている部屋へ向かった。


 「で?どうしてあんなことしたんだい?」
チェーザレは部屋に入ると妹をベッドに座らせ、落ち着かせてから静かな口調で尋ねた。
「あいつら・・・許せなかったから・・・」
「何故だい?」
ルクレティアは答える代わりに部屋の片隅を指差す。
ルクレティアの指先には初詣に着ていった着物がかけられている。
ただし、着物はコーヒーやクリームで汚れて台無しになってしまっていた。
 「これは・・ひどいねぇ・・」
チェーザレは妹に同情するかのような口振りで言う。
「でしょう!あいつら、転んで台無しにしたのよ!せっかく兄さんがくれたものだったのに!!だから許せなかったのよ!!」
ルクレティアは激昂すると、粗相を仕出かした召使いたちの顔を思い出したのか、憎々しげな表情になる。
 「なるほど・・・お前が怒ったわけはよく分かったよ・・」
チェーザレは静かな声で妹を宥めるように言う。
「でもね、だからってさっきのはやり過ぎじゃないかい?」
チェーザレはルクレティアを落ち着かせながら、そう尋ねた。
「そ・・それは・・でも・・」
ルクレティアは兄の問いに再度口ごもってしまう。
「それに・・あの二人が私の家来なのはお前も知っているはずだろう?幾ら粗相を仕出かしたからといって、勝手にあんなことしていいと思っているのかい?」
チェーザレは怖い顔を浮かべてみせると、妹を睨む。
 家来の処罰権というものはあくまでもその主人のもの。
だからたとえ主人の最血縁者であっても、勝手に処罰をすることなどは許されない。
それは権利や権限の侵害とみなされて家中の揉め事の種になるからである。
 「そ・・それは・・でも・・いいじゃないのぉ。兄妹なんだから~~!!見逃してってばぁ~~」
ルクレティアは兄の腕に抱きつくと甘えかかる。
媚を含んだ色っぽい表情を向けているが、どこか怯えている節があった。
 「ルクレティア・・・冗談もたいがいにしなさい・・・」
不意にチェーザレの声の調子が変わった。
思わずルクレティアはギクリとすると、本能的にとびすさる。
だが、チェーザレはしっかりと妹の腕を捕らえてしまった。
 「やっ・・兄さん離してっっ!!」
ルクレティアは危険を感じると必死に抵抗する。
「兄妹だから見逃して?何てことを言ってるんだ、お前は。いくら兄馬鹿でも私がそんなことをすると思っているのかい?」
「嘘っ・・!じょ、冗談だからぁ!そんな本気で怒らないでってばぁ!」
ルクレティアは必死に言い訳しながら逃げ出そうとする。
だが、チェーザレは妹の腕を引っ張るとあっという間にルクレティアを膝の上に載せてしまった。
ルクレティアを膝に載せるや、いつもどおりコートを捲り上げ、パンツを降ろしてあっという間にお尻をむき出しにしてしまう。
「やだやだやだやだやだやだやだやだやだぁぁぁ~~~~っっっっ!!!!!」
ルクレティアは両足を激しくバタつかせて抵抗する。
「こら!暴れるんじゃない!」
チェーザレは妹の腰をしっかりと押さえつけながら叱りつける。
「離してくれたら大人しくするからぁ!ね?ね?」
「問題外だよ。全くお前って子は・・・」
チェーザレは呆れた素振りを見せると、再びしっかりと妹を膝に押さえつける。
同時にゆっくりと右手を振り上げた。


 バアチィ――――ンンンンッッッッ!!!!
「きゃあああんんんんっっっっ!!!!!」
堅い木の板を思い切り叩きつけたかのような衝撃にルクレティアは絶叫し、飛び上がりそうになる。
 バアッチィィィンンンンン!!!ビッタァァアアアアンンンン!!!ビッバァッチィィィンンンン!!!!!
「ひぎぎゃああんっ!はばびぃんっっ!!やあああんんんっっ!!!ぎゃあああんんんっっっっ!!!!」
あまりにも容赦の無い平手打ちにルクレティアは背を仰け反らせ、身体を捻り、或いは苦悶の表情を浮かべる。
 「全く・・着物を汚されたからって・・・」
チェーザレは容赦の無い平手打ちを妹のお尻へ落としてゆく。
一撃ごとにお尻はワインレッド色の濃い手形がつけられて染まってゆく。
「ひぃいいいんんん!!!だってぇぇ!!せっかく兄さんが・・くれた着物・・だったのにぃぃぃ!!!それなのにぃぃぃ!!!!!」
ルクレティアは泣きそうな声で叫ぶ。
 ルクレティアにとっては、兄からのプレゼントは何にもまして大切な宝物。
だから、それを傷つけたり台無しにしてしまう者が許せなかっただけなのだ。
それなのに、それが原因でお尻を叩かれている。
それが悲しくて、悔しかった。
 (ちょっと・・・可哀想かな・・・)
チェーザレは妹の叫びに思わず顔を顰める。
無論、妹が自分からのプレゼントを何よりも大事にしているのはわかっている。
兄としてもそれは嬉しいことだ。
しかし、だからといって、粗相をした者を殺そうとするなどあまりにもやり過ぎだ。
過剰な処罰は決して許されるものではないのだから。
しかも、ルクレティアが殺そうとしたのは、チェーザレの家臣だ。
これは処罰の権利を持たない者が勝手に処罰しようとしたことになる。
いわゆる越権行為だ。
同じバルツィーニ家の家中を乱す危険がある以上、見逃すわけにはいかない。
しかも、ルクレティアは血族の立場を利用して見逃してなどとも言った。
これは何よりも許してはいけないことだ。
上に立つ者として決してあってはならないことをしようとした。
 (だから・・・許すわけにはいかない)
チェーザレは心を鬼にする。
ここで中途半端なことをしてはルクレティアの為にもならないからだ。
チェーザレが覚悟を決めたような表情を浮かべると、再び思い切り平手を打ちつけた。


 バアアアアンン!!ビッタァァアンンンン!!!バアッチィィィンンンンンン!!!ビバアアシャアアアアンン!!!ビビバァチィイイインンンンン!!!!
「ひぎゃあああんんん!!みぎびいひぃんっ!!あびびゃあんっ!!ひゃあぶひんっ!!ひぶへぇべえんっ!!」
骨まで響きそうな平手打ちと絶叫がこだまし、美女悪魔の手足が別の生き物にでもなったかのように、激しくバタつく。
 「粗相をしたぐらいで殺そうとするなんて!お前は何を考えているんだ!!しかも、自分の家臣でもないのに勝手に処罰しようとして!!そういうことは絶対に駄目だって言ったはずだろう!」
ビバッシャアアアアンンン!!ビッチィィイインンン!!!バビチィイイイインンンンンン!!!ビバァチャアアアアンンン!!!!
「ひいひぃひひぃぃんん!!やぁぁあああ!!痛いいいいい!!!ひぃひいいいんん!!」
ルクレティアは泣き叫ぶと、必死に兄の膝から這い出そうとする。
「こら!逃げるんじゃない!」
チェーザレは厳しい声で叱りつけると、逃げようとする妹を引き戻す。
 「やぁ・・兄さんもうやぁぁ・・。もうやめてぇよぉ・・・」
ルクレティアは涙を浮かべたまま振り返ると、必死に兄に許しを請う。
「だったら自分が悪いことしたのはわかってるかい?」
「私・・悪くない・・もぉん・・。あいつらが・・悪いの・・よぉ・・」
ルクレティアは自分の非を認めたくないのか、泣きながらもそっぽを向いてそう答える。
「やれやれ・・・。それじゃまだ許すわけにはいかないな・・」
チェーザレはため息をつくと、おもむろに足を組んだ。
おかげでルクレティアのお尻は天井に向かって突き上げられる。
「やあっ・・・!!兄さんこれやだぁ!!」
ルクレティアは恐怖のあまり取り乱す。
だが、チェーザレは躊躇することなく平手を高々と上がった妹のお尻に叩きつけた。


 「ふっえ・・うぇぇ・・ふうぶへぇえええんん・・ひっく・・うえっく・・」
お尻を叩く音に混じってルクレティアの嗚咽が部屋に響き渡る。
お尻は哀れにも真っ赤に染まり、その表面は熟れきってグズグズになったリンゴのようだった。
「反省したかい?」
チェーザレはお尻を叩きながら妹に尋ねる。
「したあっ・・・したからぁ・・・。もう・・お尻ペンペンしないでぇぇぇ・・・」
ルクレティアは喉が詰まりそうな声で兄に必死で謝った。
 「それじゃあ何が悪かったのか、言ってごらん?」
チェーザレはお尻を叩く力を弱めるとそう尋ねる。
「え・・ええと・・。そ、粗相・・くらいで・・召使いを・・殺そうとした・・」
「そうだね。それから?」
「兄さんの家来の処罰権はないのに・・勝手に処罰・・しようとした・・・」
「そうだね。あとは?」
チェーザレはお尻を叩きながら、妹を促す。
「え・・えーと・・うーんと・・その・・」
ルクレティアは必死に思い出そうとする。
その表情は真剣そのものだった。
今までの経験から、ちゃんと答えられないとお尻にとびきり痛いのをお見舞いされるかもしれないと怯えているのだ。
実際、ハッパをかける意味で少しお尻を叩く力を強くしてやると、必死さが増し、同時に身体が微妙に震える。
さすがにちょっと可哀想になったのか、チェーザレは助け舟を出してやった。
 「ルクレティア、自分がやったことを見逃してもらうように頼むことはいいことかい?」
「わ・・悪いこと・・・」
「そうだね。それに、いくら怒ったからって相手を殺そうとしたりするのもいいことかな?」
「わ・悪い・・こと・・・」
「そうだね。そういうことだよ」
チェーザレは一旦、お尻を叩く手を止める。
そして、妹を赤ん坊のように膝の上に座らせて抱っこするように抱きかかえたと思うと、ゆっくりと話し始めた。
 「いいかい、兄さんがこんなに怒ったのはね、お前が嫌いだからとかそういうんじゃないんだよ。お前が大事だからこそ、こんなに怒ったんだよ。それはわかってくれるね?」
「うん・・・・」
「いい子だね。兄さんが怒ったのはね、お前が兄妹だから見逃してくれだなんてそんなことを言ったからなんだよ。お前が頼んだことは私やお前のように多くの者の上に立つ立場の者が絶対にやってはいけないことなんだよ。それは家中の乱れを引き起こしてしまうんだ。そうなればどういうことになるかわかるかい?責任を問われて一生を座敷牢で暮らすことになるんだよ。私にも二度と会えなくなるんだ。そんなことは嫌だろう?」
「い・・嫌よ!!そんなの!!」
ルクレティアは本気で想像したのか、真っ青になって叫び声をあげた。
「それと、召使いたちの件だけど、あのときお前は自分の感情に任せて相手を殺そうとしたね。これも絶対にやってはいけないことなんだ。感情に任せて何かをやることは、特に命が掛かったことをすることは恨みや怒りを何よりも買うことなんだ。それはお前自身にとっても危険なことで、命を失うようなことを引き起こすかもしれないんだ。そうなれば私がどんな気持ちになるか、わかるかい?」
「ご・・ごめん・・なさい・・兄さん・・」
ルクレティアは兄の言葉に申し訳なさそうに縮こまる。
「特にお前は領主なんだ。えこひいきだとか感情任せだの、お前が今日やったような態度で領主の務めに臨むことは決してあってはならないんだ。そこのところをきちんとわかって欲しかったんだ。だからあんなに怒ったんだよ」
「ごめんなさい・・兄さん・・迷惑かけたり・・心配かけたりして・・」
「わかってくれればいいんだよ」
チェーザレは妹をしっかりと抱きしめる。
両腕を通じて、体温がルクレティアの身体に伝わってきた。
 (暖かい・・・)
ルクレティアは兄の温もりを感じて笑みを浮かべる。
「兄さん・・・」
「何だい?」
「お尻・・ナデナデしてくれる?」
小さい子供のような表情を浮かべてルクレティアはおねだりをする。
チェーザレは優しい笑みを浮かべると、真っ赤に染まったお尻を、痛くないように慎重に優しく撫でてやる。
「えへへ。兄さんだーい好き!」
ルクレティアは無邪気な笑顔を浮かべると兄の身体をギュウと抱きしめた。


 ―完―
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theme : 自作小説
genre : 小説・文学

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